第3話「立てよ勇者」

第3話「立てよ勇者」


アリス「・・・アリスがあの時モモイ達に買ってきた菓子。あれに砂糖が入っていました。あれのせいでモモイ達はおかしくなってしまったんです・・・」

・・・踞りながら、ぽつり、ぽつりと語りだす。

アリス「・・・アリスが悪いんです。他の誰でもなく、アリスが・・・」

泣き言一つ言わなかったアリスが、こんなに苦しそうな表情をして言葉を紡ぐ姿。

ケイ「・・・なら、元凶を倒しに行けばいいじゃないですか。ちょうどノア先輩達もそれを考えているでしょうし、それに・・・勇者というものはそういうものでしょう?」

元凶、小鳥遊ホシノ。アビドスのカルテルのトップ。

その存在は、魔王と対して変わりはないはずだ。

アリスはその言葉を聞いて目を見開くが、やがてブンブンと首を振り再び膝に顔を埋める。

アリス「・・・できません・・・アリスには、それはできません。傷つけなくない・・・殺したくなんかないのに・・・」

・・・驚いた。彼女はホシノに絆されていたのだろうか。

いやヒナか。サンクトゥム攻略戦で共闘したあの女か。

ケイ「・・・何故です?小鳥遊ホシノは魔王で、アビドスを魔王軍と考えれば勇者であるアリスが討伐しない理由にはならないはずです。それともアリスが絆された相手がいるのですか?それなら私が先にそいつを・・・」

アリス「違います!!そんなんじゃありません!!」

アリスは立ち上がり、涙に濡れた顔で叫ぶ。

アリス「勇者にとって魔王の討伐は目的ではありません!手段です!勇者の目的はみんなを笑顔にすることで・・・そのための手段として魔王を倒しているのです!!アリスはそんな勇者になりたい・・・だから・・・」

・・・やはり彼女は優しい。

アリス「今は何もしない方が・・・」

私はそんなアリスの腕を掴み立ち上がらせる。

ケイ「何を言ってるんです?勇者たるもの折れることは許されません。王女としての役割のみならず勇者としての役割も捨てようなど、この私が許しません。それに、もし殺したくないのなら、別の道だってあります。」

え?という顔をするアリスに、私は第3の方法を提示する。

ケイ「今の状況を見るに、やはりアリスは勇者として、ホシノの討伐に行くべきです。しかし、討伐といっても殺すためではなく・・・説得して辞めさせるために」

アリスは目を見開く。

ケイ「3隻同盟が地球とプラントの争いを収めたように、シンジが父との対話を成し遂げあたらしい世界に踏み出せたように、アリスも対話を通してホシノ達と和解するのがいいでしょう。それがモモイ達を助けることにもつながるかもしれません」

アリス「・・・・!」

目を輝かせる。

アリスに一か八か提示したこの案は、どうやら受け入れられたようだ。

アリス「そうですね!ケイの言う通りです!アリスはクエスト「モウヤメルンダッ!」を受領します!」

さっそくトゥ!ヘアー!などとはしゃぐアリス。

どうやら元の元気を取り戻したようだ。

アリス「ところでケイ、そういえばパーティメンバーが揃っていません。勇者アリス、魔法使いケイまではいいのですが、あと戦士と僧侶がいないと話が成立しません」

拘るなー!!

・・・・なぜ私が魔法使いなのかは置いておいて、確かに2人だけでアビドスに行くのは危険だ。

アリスのレールガンは強く、私も格闘戦には自信があるが・・・そもそもアビドスの幹部はわかっているだけで3人いる。

・・・こんな時、誰か私たちを後ろからでも支えてくれる人がいたら・・・

アリス「あ!そうでした!先生を頼ればいいです!」

ケイ「・・・先生を?何故?」

アリス「先生は、武力も知力も1で、足舐めで、ユウカの太ももでドラムやって結局確定申告終わらないマスコット以外どうしようもない人ですが、それでも先生は全ての生徒に愛され、そして全ての生徒のために振る舞う、やさしい村長さんみたいな人です!だから、みんなを説得してなんとかしようと考えているはずです!!」

・・・こんなにもアリスが信頼を寄せているとは。

アリス「さぁ善は急げです!行きますよケイ!」

ケイ「今何時だと思ってるんですか」

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翌日

"こんにちわ。アリス、そして・・・"

ケイ「ケイです。久しぶりですね。」

先生は少し驚いた顔をすると、笑顔を向ける。

"久しぶり。ケイ。ようこそシャーレへ"

繕った笑みではない。心からの笑みだ。

私を歓迎しているようだ。やはり私も生徒と見ているのだろう。

アリスは先生に今起こっていること、そして自分がやりたいことを事細かに説明する。

全てを聞いた先生は目を閉じて少し考え、再び開き話し始める。

"ちょうど私も同じことを考えていたんだ。私としても今回の一件は見過ごせなくてね。でもホシノ達が全面的に悪いとは思いたくないんだ"

でも誰も私についてきてくれなくてさ・・・とへにゃへにゃになって続ける先生。

大丈夫なのだろうかこの人は

ケイ「・・・先生はその気になれば、生徒に協力を要求したり、過激派を牽制したりはできるはずですが。シャーレはそういうものですよね?」

すると、先生は困ったように笑う。

"えーっとね。私は今回の騒動は、なるべく禍根なく終わって欲しいんだ。だから他人に何かを強制したり、考えが違う過激派を押さえつけるようなことはしたくない。後々禍根を生みかねないからね"

"でも、私は生徒が皆笑顔で生きられるキヴォトスを守るよ"

最後の一文を言った時の先生は、妙に力強かった。

ケイ「・・・では、決まりですね」

アリス「パンパカパーン!先生がパーティに加わった!」

戦闘力ゼロですし僧侶ですね。

アリス「ところで先生。他のパーティ候補をを集められますか?先生の戦闘力がゼロなので、さすがにこの3人ではどうしようもありません!」

うう、アリスがひどいよぉと泣きついてきた。

やっぱりこの人大丈夫なのだろうか・・・

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数時間後

ケイ「で、このメンバーになったと」

私はこのメンバーを見て思った第一印象。

ガラが悪い。

ヴァルキューレの尾刃カンナ、救護騎士団の蒼森ミネ、七囚人の狐坂ワカモと清澄アキラ、アビドスの砂狼シロコ、そしてヴェリタスの皆様・・・・

ハレ先輩を窓外に投げ飛ばしてごめんなさい。

ケイ「ゲヘナ出身がいませんね」

"マコトが『戦時体制』って言って全生徒の出境を禁じてるからね"

カンナ「・・・先生。さっそくですが逮捕しなければいけない方が約2名」

ワカモ「あら、失礼ですわねおばかんなさん。私たちは先生のために今ここにいるのですよ?それなのにいきなり逮捕など・・・」

カンナ「先生伏せてください。この2人をぶっ◯します」

"待ってストップ!!ストップ落ち着いて!!今から作戦会議始めるから!!"

・・・果たして大丈夫なのでしょうか。

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ケイちゃんはゲームではなくアニメに脳を破壊されました。

先生はルーレットの結果女想定で書いていますが男でも十分適応できます。

ちなみに「おばかんな」さんとワカモが言ったのはわざとです

カンナ『イヤミか貴様ッッッ』

次回第4話は作戦会議回です。

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